カルニタス(ラードでコンフィにしてカリッと焼いた豚肉)

写真: Missvain · CC BY 4.0

カルニタス(ラードでコンフィにしてカリッと焼いた豚肉)

豚肉をラードに沈めて低温で何時間も保ち、最後に火を強めて同じ脂の中で表面を揚げます。油に沈めていても揚げ物ではありません。約90°Cでは脂は熱を運ぶ媒体にすぎず、水を含まないので風味が溶け出していく先がないのです。この料理は、ひとつの鍋が途中で調理法を変えることそのものです。

材料

8人分
  • 豚肩ロース · 5cm角に切る。脂は付けたまま2kg
  • 塩 · 前日にすり込む大さじ2
  • ラード · 肉が沈む量。豚肉からも脂が出るので、次回は少なくてすむ800g
  • オレンジ · 果汁を搾り、皮も入れる1
  • 牛乳 · ミチョアカン流。乳糖が焼き色を助ける100ml
  • にんにく · 横半分に切る1個
  • ローリエ2
  • 粒こしょう小さじ1
  • 乾燥オレガノ小さじ1
  • 加糖練乳 · 好みで。最後のキャラメル化を深める大さじ2
  • 盛り付け
  • コーントルティーヤ16
  • 玉ねぎ · みじん切り1
  • パクチー · ざく切り1ひとつかみ
  • ライム · くし形切り2
  • サルサ・ベルデ · 添える200ml

作り方

  1. 豚肉を5cm角に切って塩をすり込み、ラップをせずに冷蔵庫で一晩置く。塩は味付けよりも水分を引き出すためで、表面が乾いているほど最後にずっときれいに色づく(塩)。

  2. 厚手の鍋でラードを溶かし、豚肉を入れる。完全に沈んでいなければならない。表面から出た部分は残りが煮えるあいだに乾き、仕上がりにむらが出る。

  3. にんにく、ローリエ、粒こしょう、オレガノ、オレンジの皮を加え、果汁と牛乳を注ぐ。水分は早いうちに飛び、香りと糖分が残る。

  4. 脂を85〜95°Cに保つ。ときどき泡がひとつ表面ではじける程度が正しく、これは揚げ物ではない。この温度では揚げ物を支える激しい蒸気が出ないので、表面は乾かず、コラーゲンはただゼラチンに変わる(揚げ物)。

  5. 2時間半置く。串を刺して抵抗がなければできあがり。ここで止めれば肉はとろけるようにやわらかいが、外側はぶよぶよのまま。

    ⏲ 150分
  6. ここで火を強める。残りの水分が飛び、脂は160〜180°Cまで上がり、同じ脂の同じ鍋が一気に揚げ鍋に変わる。表面が乾き、焼き色がつき、縁がカリッとする(焼き色とメイラード反応)。

  7. よく返しながら15分揚げる。練乳を使うならここで加える。糖分が増えて焼き色がずっと濃くなる。焦げやすいので、入れたらその場を離れない。

    ⏲ 15分
  8. 肉を網に上げて脂を切り、フォーク2本で粗くほぐす。細かく裂かない。ひと口の中にカリッとした縁としっとりした中身が同時にあるのがよい。

  9. ラードを少し冷ましてこし、冷蔵庫で保存する。捨てない。また使い、使うたびによくなる(調理油)。

  10. コーントルティーヤを油をひかないフライパンで1分温め、豚肉をのせて玉ねぎのみじん切りとパクチーを散らす。ライムを搾り、サルサ・ベルデを添えて出す。

    ⏲ 1分

アレンジ

  • 叉焼と比べて:同じ部位ですが、あちらは醤油に漬けて乾いた熱で焼き、こちらは脂に沈めます。液体は肉と風味を分け合い、脂は風味を肉の中にとどめます。
  • タコス・アル・パストールと比べて:どちらもタコス用の豚肉ですが、あちらは薄切りを漬けて縦型の串で焼き、こちらは塊のまま脂で煮ます。
くわしい説明と理由 (5)
  • ミチョアカン流:カルニタスの本場で、銅のcazo(鍋)で作ります。銅は熱を均一に広げてゆっくり冷めるので、温度が急に跳ね上がりません。牛乳や練乳、オレンジもこの地方のものです。
  • 部位:carnitería(カルニタス店)では部位で注文します。マシサは赤身、コスティージャはあばら、ブチェは胃、クエロは皮、スルティダは盛り合わせです。肩肉だけでも十分ですが、皮を少し加えるとゼラチンが増え、全体がしっとりします。
  • 鴨のコンフィと同じ原理:フランスのコンフィも脂に沈めて低温で煮て、最後にカリッと焼きます。トゥーレーヌ地方のリヨン(豚バラ肉をラードでゆっくり煮てから焼き色をつけるもの)も同じ組み立てです。
  • スユクやチョッパルと比べて(これが肝心な対比です):水は100°Cで止まり、肉の水溶性の成分はそこに溶け出します(だからこそあのスープはおいしいのです)。脂は水ではありません。100°Cで頭打ちにならず、さらに重要なことに風味が溶け込む水がありません。同じ豚肉を何時間も煮て、これほど違う結果になる理由はそこにあります。
  • 残り物:冷ましてからラードを注いで空気を遮断し、冷蔵庫で保存します。脂が肉の乾燥を防ぎます。それが本来のコンフィの目的ですが、これは塩漬けのコンフィではなく、脂の下に肉汁がたまることもあるので、冷蔵して数日のうちに食べてください。常温で空気を遮断して置くのは安全ではありません。

コツ

  • 第2段階を省かないでください。2時間半で止めれば、やわらかいゆで豚です。カルニタスをカルニタスにしているのは、脂がようやく揚げ油になる最後の15分です。
  • 温度は泡で読みます。温度計がなければ、数秒にひとつ泡が表面ではじける程度で約90°Cです。ジュワジュワと音が続くなら熱すぎます(火加減)。
  • 塩は前日に。この工程は味付けではなく乾燥のためです。乾いた肉は最後にすぐ色づき、濡れた肉は水分が飛ぶまで色づき始めません。
  • 沈めたままに。脂が足りなければ、肉を減らすのではなく、口径の狭い鍋に替えます。
  • 色をつくるのはオレンジと牛乳です。どちらも糖分をもたらし、その糖分は温度が上がると色づきます。練乳は同じ効果を強めたもので、だからこそ焦げやすいのです。
  • 粗くほぐします。細かく裂くと、カリッとした縁がしっとりした中身に埋もれてやわらかくなります。指の関節2つ分くらいの大きさが適当です。
  • ラードは決して捨てないでください。こして冷やし、下に沈んだ肉汁から脂だけを取り分ければ数か月もち、次に作るものがおいしくなり、じゃがいもを揚げても見事です。
  • ほぐしたら置いておかないでください。カリッとした食感は数分で失われます。作り置きなら、出すときに油をひかない熱いフライパンで少し焼き直します(食べる温度)。
くわしい説明と理由 (2)
  • 油に沈めていても揚げ物ではありません。揚げ物が成り立つのは、蒸気となって噴き出す水が油の侵入を防ぐからで、それには170°C前後が必要です。90°Cではそのどれも起きません。脂は熱を運ぶ媒体にすぎず、しかも水と違って好きな温度に設定できる媒体です(揚げ物)。
  • だから何も溶け出しません。肉をゆでると水溶性の成分は水に移ります。脂の中には移る先の水がないので、成分は肉にとどまります。この料理の味がこれほど濃いのはそのためです。

この料理の土台になる基本

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