日本料理

最中(パリッとした皮とあんこ)
薄くパリッとした二枚の皮であんこを挟んだ和菓子です。皮は小麦粉のウエハースではなく、もち米の生地を紙のように薄くのばし、熱した鉄の型で膨らませたもので、だから米の味がします。この菓子全体を左右する問題は、あんの水分が皮に移って数時間で湿らせてしまうことです。その答えは、あんをほかの用途より固めに炊くことと、食べる直前に詰めることです。

盛岡じゃじゃ麺(肉味噌の平麺、最後はちいたんたん)
岩手県盛岡の麺料理です。平たいうどんのような平麺に肉味噌、きゅうり、ねぎをのせ、食卓でラー油、しょうが、にんにく、酢で味を調えます。麺を食べ終えたら器に卵を割り入れ、麺のゆで汁を注いで、ちいたんたんというスープにします。

南蛮漬け(揚げた魚を熱い甘酢に漬けたもの)
小魚に片栗粉を薄くまぶして揚げ、玉ねぎ、にんじん、ピーマンを入れた熱い甘酢にすぐ漬ける、冷蔵庫で保存する日本のおかずです。ほかの揚げ物がみな衣を乾いたまま保とうとするのに対し、この料理は衣にしみ込ませるように作られています。揚げたでんぷんの殻を穴だらけにする通り道が、ここでは問題ではなく仕組みなのです。何時間もおき、翌日のほうがおいしくなります。

ナポリタン
日本の喫茶店のパスタです。ゆでたスパゲッティを、ウインナー、玉ねぎ、ピーマン、マッシュルームと一緒にケチャップで炒めます。ナポリの名を冠しながら日本で生まれた、甘じょっぱく懐かしい、世代を問わず愛される一皿です。

納豆(納豆菌で発酵させた大豆)
日本の発酵大豆で、ゆでた大豆に納豆菌をつけ、40°Cで一日置いて作ります。ねばねばして糸を引き、塩を使わず、温かく、空気に触れさせる——失敗した発酵のように見えます。多くの発酵食品は酸性度が早く下がることで安全になりますが、納豆のpHは約8まで上がり、殺菌した豆に純粋な菌をつけることで安全を保っています。

肉じゃが
薄切りの牛肉とじゃがいもを、味つけした少なめのだしで煮る、日本の家庭料理の代表です。主役は牛肉ではなく、牛肉はじゃがいもに味をつけるためにあります。煮汁は材料の半分の高さまでしかないので、材料に直接のせる落としぶたをします。煮立った煮汁がふたに当たって全体に降りかかり、誰も混ぜなくても鍋全体に均一に味がつきます。調味料を入れる順番も決まっていて、砂糖が先、醤油はあとです。

にしんそば(甘く煮た身欠きにしんの温かいそば)
温かいかけそばに、戻して甘辛く煮た身欠きにしんを一枚丸ごとのせたものです。京都と北海道の名物で、焼かずに戻して煮る干し魚です。

のっぺ(とろみが出るまで煮た里芋と根菜)
正月やお祝いに作る新潟の料理です。里芋に、にんじん、ごぼう、れんこん、鶏肉、油揚げ、かまぼこ、しいたけを小さく切って合わせ、澄んだだしで煮ます。でんぷんは加えず、里芋だけでとろみをつけ、温かくても冷たくても食べます。

お茶漬け(お茶とだしをかけたご飯)
ご飯に熱いお茶とだしをかけた、日本の一杯です。材料を見るとレシピと呼ぶほどのものはなさそうですが、決め手は3つあります。ご飯は炊きたてをそのまま使わないこと、注ぐのはご飯の高さまでにすること、そして塩気は汁ではなく具に持たせることです。味のついた汁に入ったご飯は、別の料理です。

おでん(練り物、大根、卵のだし煮)
練り物、大根、こんにゃく、ゆで卵、巾着を醤油味のだしで煮込む日本の鍋料理。5分でよいものと2時間かかるものが同じ鍋に入るので、おでんの本質は入れる順番にあります。そして味は温めている間ではなく、冷めていく間に入ります。温めると多孔質の具から水分が押し出され、冷めると縮んでだしを吸い込むのです。だから一晩おいて温め直したおでんは、1時間で作ったものとは別物になります。

お好み焼き
細切りのキャベツを軽い生地で合わせ、豚バラ肉をのせて焼き上げる、ふんわりした日本の粉もんです。お好み焼きソース、マヨネーズ、踊るかつお節で仕上げれば、大阪の屋台の定番が家庭で味わえます。

オムライス
日本の洋食の定番です。ケチャップで炒めたチキンライスを、やわらかいオムレツで包むかのせて、ケチャップかデミグラスソースで仕上げます。赤いご飯にかかった黄金色の卵は見た目もかわいらしく、年齢を問わず愛されています。

おにぎり
温かいご飯で梅干し、ツナマヨ、鮭などの具を包んでにぎり、海苔を巻いた日本のおにぎり。手に塩水をつけるだけで誰でも作れ、お弁当やおやつにぴったりです。

温泉卵
白身はまだとろりと流れるのに黄身は固まっている、日本の卵料理です。ゆで卵のちょうど逆で、その理由はただ一つ、温度差がないことです。ゆで卵で白身が先に固まるのは、白身のほうが早く固まるたんぱく質だからではなく、外側が100°Cなのに中心はまだ冷たいからです。白身の大部分はしっかり固まるのに80°C近くが必要で、黄身は約70°Cで固まりきるので、卵全体を68〜70°Cに保てば順番が逆になります。このレシピにあるのは時間ではなく、保つべき温度です。

おやき(味付けした青菜を包んだ小麦粉の皮)
長野のおやきです。前もって味をつけた青菜の具を薄い小麦粉の生地で包んで丸く形づくり、フライパンで焼き色をつけてから、ふたをして仕上げます。寒く傾斜がきつくて米が育たない土地で、ご飯の代わりに食べられていました。

親子丼
鶏肉と玉ねぎを甘辛いつゆで煮て、やわらかく火を通した卵でとじ、ご飯にのせる日本の丼。「親子」は鶏肉と卵のことです。フライパンひとつで約15分。日本の家庭料理の中でもいちばん手軽なもののひとつです。

ラーメン(醤油)
日本の醤油ラーメンです。昆布とかつお節の澄んだスープを醤油の「タレ」で味付けし、コシのある麺に、チャーシューと半熟卵をのせます。タレとスープを別々に作り、丼で合わせるのが基本の構成です。

ルイベ(凍ったまま切って食べる鮭)
北海道のアイヌの凍った鮭です。冬に外に置いて芯まで凍らせた鮭を、凍ったまま薄く切り、溶ける前に醤油とわさびで食べます。ユッケやカルパッチョのような生肉料理は包丁のために表面だけを凍らせ、芯まで凍らせることを戒めます。解凍すると身から水が出るからです。ルイベは芯まで凍らせ、解凍をなくします。同じ冷凍が、生の鮭が持ちうる寄生虫への対策にもなります。

桜餅(ピンクの皮であんを包み塩漬けの桜の葉で巻いたもの)
和菓子のひとつで、あんを薄いピンクの小麦粉の皮で巻き、さらに塩漬けの桜の葉で包みます。塩をひとつまみあんに混ぜる代わりに、塩は葉にあるので、甘さと塩気は混ざらず、口の中で初めて出会います。葉を食べるかどうかは食べる人が決めること。作り手が決めるのは、先に葉からどれだけ塩を抜くかです。

サーターアンダギー
沖縄のお菓子。小麦粉、砂糖、卵の固い生地を丸め、わずか140〜150°Cの油でゆっくり揚げます。先に外側が固まり、そのあと中心がふくらんで外側を割ります。その割れ目が笑顔に見立てられるので、おめでたい席で揚げられます。ほかの揚げ物では破裂は失敗ですが、ここでは割れることが目的で、それを起こすのは水でも空気でもなく、ベーキングパウダーです。

赤飯(小豆と蒸したもち米)
日本のお祝いのご飯。もち米を小豆のゆで汁にひと晩浸して色を移し、小豆と一緒に蒸します。小豆は浸水させずに使います。小豆は長く浸すほど、煮たときに皮が割れやすくなるからです。ごま塩をかけて食べます。

せんべい汁(醤油味の汁で柔らかく煮た南部せんべい)
青森県八戸の汁物。鍋用に特別に焼いた小麦のせんべいを手で割り、鶏肉、ごぼう、きのこと一緒に醤油味の汁で煮ます。せんべいが汁を吸って、もちもちしたすいとんのようになります。

しゃぶしゃぶ(昆布だしにくぐらせる牛肉)
薄切りの牛肉を澄んだ昆布だしに5〜10秒くぐらせ、ポン酢やごまだれにつけて食べます。だしは煮立てずに85〜95°Cに保ちます。だからこそ、最後に鍋に残るものが、その食事でいちばんのだしになるのです。

食パン(ミルクパン)
日本のミルク食パンで、その柔らかさはバターではなく水から生まれます。粉の一部を牛乳と65°Cまで加熱すると糊状になります。でんぷんが糊化して自重の何倍もの水をつかみ、そうして抱えられた水は生地をだれさせません。だから加水率75%の生地が65%の生地のように扱えます。何日たってもふんわりしているのもそのためです。パンが固くなるのはパンが乾くことではなく、でんぷんが結晶に戻ることだからです。

ざるそば(冷たいそばとつけ汁)
そばをゆでて冷水で洗い、ざるで水気をきって、冷たいつゆにつけて食べます。ゆでた麺の表面のでんぷんを冷水でもみ洗いして落とすこと、つゆを前もって作って冷やしておくこと。そばそのものの味を引き出すのは、この2つです。

スープカレー(札幌のスパイススープ、鶏肉と焼き野菜)
1970年代に北海道札幌で生まれた、日本のカレーの一派です。カレーライスが小麦粉のルーでとろみをつけるのに対し、こちらはさらりとしたスパイスのスープで、ご飯はスープに浸さず別の皿で出します。野菜もスープで煮込みません。別に焼くか揚げるかして最後に上にのせるので、形も色も保たれます。とろみと引き換えに、一つひとつの具材の輪郭を手に入れた料理です。

すき焼き
薄切りの牛肉を長ねぎ、豆腐、きのこと一緒に割り下(醤油、みりん、砂糖)で煮て、生卵につけて食べます。水は入れないので煮汁は具材から出たものだけで、牛肉は30秒ほどで引き上げます。この2つが、煮込みではなく鍋料理であり続ける理由です。

寿司
日本の寿司。固めに炊いた酢飯(シャリ)をのりに広げ、きゅうり、アボカド、魚などの具をのせて巻きすで巻きます。寿司の8割はシャリ。すし酢の配合さえ決まれば、家でもおいしい巻き寿司が作れます。

鯛焼き
日本の屋台の甘味です。魚の形の焼き型にスポンジ生地を流し、あんこを入れて両面を焼きます。生地の中で広がらないようあんこを冷やしておくこと、焼き上がりを平らに寝かせず網に立てておくこと。外側をしっとりさせないのは、この2つです。

炊き込みご飯(味付けしただしで鶏肉と野菜と炊いたご飯)
日本のひと鍋で作るご飯です。醤油、みりん、酒で味をつけただしに、鶏肉、ごぼう、にんじん、しいたけ、油揚げをのせて同じ鍋で炊き、具の汁を米粒のあいだに落とします。米はただの水に浸し、調味料は火にかける直前に入れます。味のついた水は米が水を吸う速さを遅らせ、浸水が役目を果たせなくなるからです。醤油は水加減に含めて数え、具は上にのせて混ぜません。

たこ焼き
大阪の屋台料理です。だしで水に近いほどゆるくした生地をゆでダコの上に流し、くぼみのある鉄板で転がして焼きます。中心がカスタードのようにとろりと固まるには、それほど薄い生地でなければなりません。また一度に裏返すのではなく、90度ずつ2回に分けて返さないと、丸くなる前に皮が破れます。

たくあん(ぬか漬けの大根)
大根を米ぬかと塩に埋めて発酵させる漬物で、漬け汁は使いません。大根から押し出された水分がぬかを湿らせてペースト状にし、それが空気を遮ります。それができるのは、大根を先に2〜4週間干して二つ折りに曲がるまでにし、水分の約3分の2を抜いておくので、樽が水であふれないからです。

たまごサンド
ゆで卵をマヨネーズで和え、やわらかい食パンにたっぷりはさんだ日本のたまごサンドです。コンビニの定番として有名です。卵をゆでてしまえば混ぜてはさむだけなので、誰でも15分で、クリーミーでほっとするサンドイッチが作れます。

天ぷら
日本の揚げ物です。エビや旬の野菜に氷のように冷たい衣をつけて揚げ、軽く、レースのように薄く、パリッと砕ける衣に仕上げます。魅力は、空気を含んだ衣とやわらかな中身の対比。熱いうちに天つゆにつけて食べます。

天むす(エビ天のおにぎり)
小さなエビの天ぷらを中に入れて海苔で巻いた、ひと口大のおにぎりです。1950年代に三重県津市の天ぷら店のまかないとして始まり、名古屋名物になりました。天ぷらは熱いうちに醤油味のたれにくぐらせるか塩をふってから包み、冷めても味が落ちないので弁当として売られています。

天津飯(カニ玉をのせたご飯、とろみあんかけ)
日本で生まれた中華料理です。ふんわりしたカニ玉をご飯にすべらせ、でんぷんでとろみをつけた甘酢あんをかけます。とろみのある液体の中では熱が伝わりにくいという事実は、鍋の中では調理の順番を決める障害ですが、皿の上では設計そのものです。あんはふたのように卵とご飯を覆い、温かさを保ちます。

照り焼きチキン
フライパンでからめ焼きにする日本の鶏料理です。皮をパリッと焼いた鶏もも肉に、醤油、みりん、砂糖をそのままフライパンで煮詰めたつやのある照り焼きのたれをからめます。切ってご飯にのせれば、申し分のない丼になります。

ところてん(酢醤油で食べる海藻のゼリー麺)
日本の夏のおやつ。紅藻を1時間煮てその煮汁を固め、細長く突き出して酢と醤油で食べます。粉寒天は入れません。固める成分は海藻の細胞壁から熱い湯に溶け出します。江戸の冬の夜にこのところてんを凍らせたことから、寒天が見つかりました。

豚汁
豚肉と根菜(大根、にんじん、ごぼう、じゃがいも)をまずごま油で炒め、水で煮て味噌で仕上げます。味噌汁と同じ味噌を使いながら、順番は逆です。味噌汁はだしを取ってそこに具を入れますが、こちらは豚の脂で野菜を炒めることがスープを作ります。だからだしなしでも成り立ち、味噌汁はできたてがいちばんという決まりに反して、この汁はわざと取っておいて温め直されるのです。

とんかつ
日本のとんかつです。厚切りの豚ロースにパン粉をつけ、カリッと揚げます。甘酸っぱいとんかつソース、シャキシャキのキャベツのせん切り、ご飯と一緒に、誰からも好まれる一品です。

佃煮(醤油とみりんで煮詰めた昆布)
昆布、小魚、貝、野菜などを醤油、みりん、砂糖で汁気がなくなるまで煮詰めた日本の常備菜です。名前は江戸の佃島に由来し、漁師たちが獲った魚を塩辛く煮詰めて、しけの日や海の上で食べていました。このレシピでは、だしを取ったあとの昆布を使います。ひと匙でご飯が1杯食べられます。

うどん(かけうどん)
昆布とかつお節でとった澄んだだしに、ふっくらしたうどんを合わせます。だしの素を使えばさらに手軽で、甘辛く煮た油揚げをのせれば、おなじみの「きつねうどん」になります。

梅干し(塩漬けして天日干しした梅)
梅を1か月塩に漬け、3日間天日に干し、それから自分の漬け汁に戻す日本の保存食。干し柿は干すことで仕上がりますが、梅干しでは干すのは途中の工程で、干したあとの実は自分が出した漬け汁に戻ります。

焼きまんじゅう(味噌だれを塗って焼く串刺しの蒸しまんじゅう)
群馬のおやつ。こうじで発酵させた小麦生地を蒸した素まんじゅうを竹串に刺し、黒砂糖で甘くした濃い味噌だれを塗って、焦げ目がつくまで焼きます。冷めると硬くなるので、焼きたてを食べます。

焼肉(卓上で焼く牛肉)
テーブルに据えた網で、部位ごとに牛肉を焼く日本の料理です。たれは漬けだれではなくつけだれなので、肉の大半は味つけなしで運ばれてきます。部位ごとに厚さが違い、したがって焼き時間も違い、焼く順番も大事です。

焼きそば
キャベツと豚肉をウスターソースベースのソースで炒めた日本の焼きそば。市販の麺と余り野菜でフライパンひとつ、15分で作れます。かつお節と青のりをかければ本格的な味に。

焼き鳥
ひと口大の鶏肉とねぎを串に刺し、甘辛いたれ(醤油ベースの照りだれ)を塗りながら焼く日本の鶏の串焼きです。外は軽く焦げ目がつき、中はジューシーな居酒屋の定番。塩で焼く「塩」と、たれを塗る「たれ」で楽しめます。

生八ツ橋(あんを包んで折ったシナモン風味の蒸した米の皮)
京都のシナモン菓子です。うるち米の粉に少しのもち米の粉を合わせた生地を丸ごと蒸してこね、シナモンをふって2mmにのばし、四角に切ってあんの上で三角に折ります。米の生地は折れないという決まりは、大部分が生のままの生地についての話です。この生地はでんぷんがすべて加熱されているので、薄くのばしても割れずに折れます。同じ生地をオーブンで乾かしたものが、もともとの硬い八ツ橋です。

羊羹(寒天で固めた小豆の菓子)
あんを砂糖と寒天で固めた、包丁で切れるほどしっかりした和菓子です。寒天はゼラチンと正反対のふるまいをします。約40°Cで固まり、85°Cを超えるまで溶けないので、ひと切れは手に持っても形を保ち、口の中でも溶けません。ゼラチンは決して沸騰させてはいけませんが、寒天は沸騰させなければなりません。

吉田のうどん(キャベツと煮た肉をのせた硬く太いうどん)
山梨県富士吉田のうどん。噛み切らなければならない太く硬い麺を、醤油と味噌で味をつけた煮干しと干ししいたけのだしで食べ、ゆでたキャベツと甘辛く煮た肉をのせ、「すりだね」という唐辛子の油みそを添えます。

湯豆腐(昆布だしで温めた豆腐)
京都の豆腐鍋です。土鍋に昆布を敷いて豆腐を入れ、湯を沸騰直前まで温め、豆腐が揺れ始めたらひとつずつすくって醤油だれにつけて食べます。豆腐はその湯から取り出して食べるので、湯は昆布だけのもので、決して沸騰させません。沸騰させると豆腐は締まって中に穴があき、底の昆布はぬめりと苦みを出します。ひとつの温度が両方を守るのです。

ずんだ餅(甘い枝豆あんの餅)
東北地方の甘味で、白玉の餅に、枝豆をすりつぶして甘くした緑色のあんをからめます。小豆あんは乾燥した豆を浸水させ、煮て、煮詰めて作りますが、枝豆は青いうちに収穫した大豆なので、塩を入れた湯で数分ゆで、薄皮をむき、二度と火にかけずにすりつぶします。煮詰めていないあんは水分が多くて包めないので、餅の中ではなく上にのせ、もつのは1日です。

明石焼き(だしにつけて食べるタコ入りの柔らかい卵焼き)
兵庫県明石の名物です。卵をたっぷり使った薄い生地で、小麦粉の一部を浮き粉(小麦でんぷん)に置き換え、タコを包むように焼いて、だしにつけて食べます。たこ焼きよりずっと柔らかく、黄色い仕上がりです。

あん肝(蒸したあんこうの肝)
あんこうの肝を使った日本の珍味です。塩をすり込み、酒で洗い、血管を除いて筒状に巻いて蒸します。冷やして輪切りにし、もみじおろし(唐辛子入りの大根おろし)、ねぎ、ポン酢を添えます。肝の約40%が脂肪で、そのため海のフォアグラと呼ばれます。

大福(柔らかい餅であんこを包んだ菓子)
和菓子のひとつで、あんこをもち米の薄い皮で包みます。餅が伸びる理由はアミロースです。うるち米のでんぷんはアミロースが約17%で、これは早く再結晶するまっすぐな分子です。もち米にはほとんど含まれないので、餅はよく伸び、翌朝もやわらかいままです。

みたらし団子(醤油だれの焼き団子)
米粉を熱湯でこねてゆで団子にし、串に刺して焼き、醤油のたれをからめます。うるち米の粉ともち米の粉の割合が歯ごたえを決めます。もち米の粉だけで作ると、できるのは団子ではなく餅です。

田楽(味噌を塗って炭火であぶった豆腐の串)
室町時代からの料理。豆腐を串に刺して焼き、甘い味噌を塗って数秒だけ炭火に戻します。味噌はふつう香りのために煮立てないようにしますが、ここでの狙いはそこではありません。遊離アミノ酸の多い味噌は砂糖とともに炭火で30秒もあれば焼き色がつき、新しい香りが生まれます。

どら焼き
カステラのような小さな2枚の皮で、あんこをはさんだもの。生地に入れるはちみつとみりんが、これをパンケーキではなくどら焼きにします。しっとり感も、つやも、数日もつことも、そこから生まれます。本当に技術がいるのは、まだらのない均一な焼き色の面だけです。

エビフライ(まっすぐに伸ばしたパン粉揚げのエビ)
日本の洋食のエビの揚げ物。殻をむいたエビの腹に切り込みを入れてまっすぐに伸ばし、小麦粉、卵、パン粉をつけて揚げ、タルタルソースとせん切りキャベツを添えます。

ほうれん草のごま和え
ゆでたほうれん草を粗くすった炒りごまで和え、醤油と砂糖だけを加える和食の副菜です。脂が油としてではなく、すりつぶした固体の中に入ってやってくるので、和える前に青菜をいつもより固く絞らなければなりません。